フィーリー
映像に触感や匂いまで加えた娯楽。強い刺激で人々を満たし、考える隙も不満も与えないための“気晴らし”として使われる。
フィーリーとは、オルダス・ハクスリーの小説『すばらしい新世界』に登場する娯楽で、映像と音に加えて、触覚などの身体感覚まで観客に伝える見世物を指す。観客は座席の接触部に触れながら、画面の出来事に対応した感覚を身体で味わう。映画を見るだけでなく、感覚そのものを消費するための娯楽である。
作品の内容よりも、そこで与えられる刺激の強さが重視される。視覚や音だけでなく、触覚まで絶え間なく刺激されることで、退屈や静かな思索が入り込む余地は小さくなる。ソーマや性の解放と並んで、フィーリーは市民の時間を快楽で満たし、不快や退屈から遠ざける仕組みとして社会に組み込まれている。
禁じられた書物を取り締まる必要さえ、そこでは大きな問題にならない。人々がそれを欲しがらないよう、もっと手軽で刺激的な娯楽が常に用意されているからである。フィーリーが描いているのは、検閲によって自由を奪われる社会だけではない。考えることや読むことよりも、つねに新しい快楽を与えられることを人々自身が望むようになったとき、自由は誰かに奪われるのではなく、使われないまま静かに失われていく。その危うさを、フィーリーは娯楽というかたちで示している。
Brave New World Aldous Huxley / 1932
A future society in which human beings are manufactured and managed in factories. People are assigned a caste before birth, their unease dissolved by the drug soma, content within a happiness handed to them. A world that has traded away freedom for stability.