ソーマ
副作用もなく、苦痛や不安をないものにすることができる薬。少しでも悲しみや鬱々とした気分が訪れれば、人々はすぐにソーマを服用する。ソーマは幸福感を与え、不満や疑問、葛藤さえも静かに消し去る。人々も社会も、恒常的に「安定」させることができる。
来歴
ソーマとは、オルダス・ハクスリーの小説『すばらしい新世界』に登場する、世界国家が市民に配給する合法的な薬を指す。わずかな量で高揚と安らぎをもたらし、副作用や二日酔いもない。人々は不安や退屈を覚えるたびに、ためらいなくこれを口にする。
ソーマは、罰としてではなく福祉として日常的に配られる。幼い頃からの教育によって、飲むことが当然の作法として身についている。苦痛が取り除かれることに、誰も異議を唱えない。
苦しみが消えれば、「なぜ苦しんでいるのか」と。その苦しみの原因を問う理由もなくなる。ソーマが支えているのは個人の心地よさであると同時に、社会の安定でもある。ソーマは幸福を与えるための薬であると同時に、人々から苦しみや疑問、反抗の芽を取り除く装置でもある。『すばらしい新世界』では、暴力ではなく快楽によって秩序を維持する社会の象徴として描かれている。