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思想

全体主義

政治だけでなく思想や生活のすみずみまで、国家がただ一つの価値観で覆い尽くそうとする体制。個人の領域が消え去る。

来歴

全体主義とは、政治だけでなく思想や生活のすみずみまでを、ひとつの価値観で覆おうとする支配のあり方を意味する。思想家のハンナ・アーレントは『全体主義の起源』で、ナチズムとスターリニズムを、従来の独裁とは異なる新しい現象として論じた。

彼女が着目したのは、暴力の規模よりも、その構造である。全体主義は、世界を説明し尽くす筋書きを与え、その筋書きに合わせて現実の側を作り替えていく。人々を結びつけていた中間の集団──職場、団体、近隣の関係──が壊れ、たがいに孤立した個人が大衆として残されたとき、この支配は根を下ろしやすくなる、というのがアーレントの見立てである。

アーレントが全体主義の核に置いたのは、絶え間ない恐怖と、世界を説明し尽くすイデオロギーとの結びつきだった。この語が今も参照されるのは、それが過去の二つの国家の名前に限った話ではなく、孤立と、すべてを説明する物語と、事実の軽視、という組み合わせによっていつでも生まれうるものだからである。

出典

ハンナ・アーレント『全体主義の起源』