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思想

複合汚染

単体では基準内とされる農薬・排気・食品添加物なども、いくつも重なり合うことで思わぬ害を生むという指摘。個々には「問題ない」とされるものが、暮らしのなかで静かに積み重なっていく。

来歴

複合汚染とは、単体では基準の範囲内とされる物質も、いくつも重なり合えば思わぬ害を生みうる、という見方を指す。この語が広く知られるようになったのは、有吉佐和子が一九七〇年代半ばに新聞連載した同名の作品による。

作品は、農薬、化学肥料、食品添加物、排気ガスといった個々の話題を追いながら、それぞれが「安全」とされる根拠を確かめていく。試験は多くの場合、一つの物質を単独で調べる形で行われる。ところが人が実際に暮らす場所では、それらは同時に、少量ずつ、長い年月にわたって重なっていく。連載は大きな反響を呼び、その後の食と農をめぐる関心にも影響を与えた。

問題にされているのは、どれか一つの物質の危険性ではない。個々には問題ないとされたものが積み重なるとき、それを引き受けて説明する者がいなくなる、という構造のほうである。誰も嘘をついていないのに、全体としては誰も確かめていない領域が残る。

出典

複合汚染 有吉佐和子 / 1975

農薬や合成洗剤、食品添加物など、さまざまな化学物質が絡み合って環境と人体をむしばむさまを、取材にもとづいて描いた長編小説。朝日新聞連載で大きな反響を呼び、日本で環境問題への関心を広げた。

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