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思想

ディストピア

理想郷を意味する「ユートピア」の反対語。表面上は秩序立って見える世界だが、その内部では、独裁的な体制や、テクノロジーを駆使した極端な管理・監視の蔓延などにより、自由や人間性が抑圧された社会。

来歴

ディストピアとは、ユートピアの反対を指すために用いられる語である。トマス・モアが16世紀に造ったユートピアは「どこにもない場所」を意味し、理想郷の意で使われてきた。ユートピアに対してディストピアは、「悪い場所」を語のかたちに含んでいる。

語として広く知られる用例に、19世紀の哲学者ジョン・スチュアート・ミルが議会での演説で用いたものがある。ただし、それ以前の使用例も指摘されており、誰が最初に用いたかを一人に定めることは難しい。このディストピアという用語が今日の意味で定着していくのは、20世紀に入り、管理と抑圧を描く作品が相次いで書かれてからである。

ディストピアとして描かれる社会は、荒廃した世界とはかぎらない。『すばらしい新世界』のように、表面は整然として、清潔で、多くの人が満足している場合すらある。この語が指し示しているのは、秩序や幸福が実現されたその仕方のほうであり、何を差し出した結果としてその静けさが成り立っているのか、という問いのほうである。

出典

ジョン・スチュアート・ミル(1868年の演説)