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思想

自由からの逃走

手にした自由の重さと孤独に耐えかねて、人はむしろ、自ら進んで強い権威に身を委ねようとする。自由から逃げ出した先で、服従を選んでしまう心のしくみ。

来歴

自由からの逃走とは、エーリッヒ・フロムが一九四一年の著書で示した見方で、手に入れた自由の重さに耐えかねた人が、みずから進んで強い権威へ身を委ねようとする心の動きを指す。

フロムが考えていたのは、ナチズムがなぜ支持を集めたのかという問いだった。彼の見立てでは、近代の人間は伝統や身分の束縛から解き放たれた一方で、寄る辺のなさと孤独を抱えることになった。自由には、自分で決めるという負担が伴う。その負担から逃れる道として、服従や同調、あるいは破壊が選ばれることがある。

奪われた自由よりも、手放された自由のほうが見えにくい。この本が長く読まれてきたのは、抑圧を上からの力だけで説明せず、迎え入れる側の心のありようを見ようとしたからである。何かに従うことが安らぎとして感じられるとき、それは強制と呼ばれないまま進んでいく。

出典

エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』