ガスライティング
「そんなことは言っていない」「気のせいだ」と、相手の記憶や感覚を否定し続けることで、やがて相手は、おかしいのは自分のほうだと信じ込まされていく。
来歴
ガスライティングとは、相手の記憶や知覚をくり返し否定することで、当人に「おかしいのは自分のほうだ」と思わせていく心理的な操作を指す。語源は、パトリック・ハミルトンの戯曲『ガス燈』(1938年)と、その映画化にある。
作中では、夫が家の別の部屋で灯りを点けるたびに、妻のいる部屋のガス燈が暗くなる。妻がそれを訴えると、夫は、そんなことは起きていないと繰り返す。物を隠しては、置き忘れたのだと告げる。目の前で起きていることを一つずつ否定されるうちに、妻は自分の感覚を信じられなくなっていく。
この手口が効くのは、嘘が巧妙だからではなく、確かめる相手がほかにいないからである。ガスライティングという語が示しているのは、暴力を用いずに人から判断の足場を奪う方法があるということであり、そこで起きているのは、意見の対立ではなく、現実の側を書き換える試みである。
出典
戯曲・映画『ガス燈』に由来