学習性無力感
何をしても変わらない、という経験を重ねた末に、人は逃げ道が開いていてもそこへ動かなくなる。抵抗しないことを、いつのまにか学んでしまう。
来歴
学習性無力感とは、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンらが一九六〇年代の実験にもとづいて示した概念で、何をしても状況が変わらない経験を重ねた末に、逃れる道が開いても動かなくなる状態を指す。
実験では、自分では止められない不快な刺激を繰り返し受けた個体が、後に回避できる状況に置かれても、試みること自体をやめてしまう様子が観察された。無力さは、はじめから備わっているのではなく、経験を通じて学ばれる——この見方は後に、抑うつの理解や教育の場面へも広く応用された。
理論はその後、研究者自身の手でも修正が加えられており、細部の解釈は今も検討が続いている。それでも中心にある指摘は残る。抵抗しない人を見たとき、その人の性質を数える前に、その人が何を学ばされてきたかを問う余地がある、ということである。
出典
マーティン・セリグマン