単一国
市民が番号で呼ばれ、ガラス張りの部屋で暮らす国家。生活は時間割どおりに管理され、個人よりも全体の“調和”が優先される。
来歴
単一国とは、エヴゲーニイ・ザミャーチンの小説『われら』に描かれる国家を指す。市民は名前ではなく番号で呼ばれ、住居はガラスで作られ、起床から食事、労働、就寝までが「時間律法表」によって分単位で定められている。
透明な壁は、隠しごとがないことの証として説明される。個室のカーテンが許されるのは、あらかじめ申請した短い時間だけである。作中の語り手D-503は、この暮らしを不自由とは感じていない。むしろ、自分で選ばなくてよいことの安らぎを繰り返し語り、詩や数式の美しさになぞらえる。
自由を混乱や苦しみとみなし、管理を恩恵として語る一人称。この作品の力はそこにある。単一国が示しているのは、外から見れば抑圧に映る社会が、内側では合理や幸福として受け入れられうるということである。何かがおかしいと気づくには、それと比べられる「外側」の存在が要る。