侍女
子を産むためだけに有力者の家へ配され、個人としての名前も人生も持たない女性たち。「オブフレッド」のように、主人の名で呼ばれる。
来歴
侍女とは、マーガレット・アトウッドの小説『侍女の物語』で、子を産む役目のみを負って有力者の家に配された女性たちを指す。赤い衣と顔を隠す白い被り物が定められ、外出は二人一組に限られる。
彼女たちは個人の名を奪われ、仕える男の名に前置詞を付けたかたちで呼ばれる。語り手のオブフレッドという呼び名も、その一人であることを示すだけで、彼女自身を指してはいない。読み書きは禁じられ、月ごとの儀式は聖書の一節を根拠として行われる。所有物ではないと説明されながら、実際に選べることはほとんど残されていない。
名前を失うことは、過去を失うことに近い。それでも語り手は、記憶の中で自分の名を手放さずにいる。制度がどれほど徹底しても、内側で誰かが自分を数え続けているかぎり、その人が完全に役割へ還元されることはないと言えるかもしれない。