文学やアニメ、映画、思想など、「ディストピア」に関連する言葉のギャラリーです。

用語一覧へ戻る

物語

記憶穴

都合の悪い記録を焼却する巨大な焼却炉の投入口。新聞記事や写真、反体制派の存在記録など、不都合なものは、この記憶の穴に次々放り入れる。過去の事実は消し去られ、「なかったこと」になる。歴史を支配者に都合よく書き換えるために使われる。作中、スローガンとして、「過去を支配する者は未来を支配する。現在を支配する者は過去を支配する」という言葉も出てくる。

来歴

記憶穴とは、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する、不都合な記録を処分するための投入口を指す。壁に開いた小さな穴に紙片を落とせば、建物の奥の焼却炉へ吸い込まれ、跡形もなく消える。

主人公ウィンストンが勤める真理省では、過去の新聞記事が日々書き換えられている。党の予測が外れれば数字が直され、粛清された人物の名は記事から削られる。書き換えの前の版は記憶穴へ落とされ、修正されたという事実そのものが残らない。こうして、党の発表は常に正しかったことになる。

記録が消えたあとに残るのは、人の記憶だけである。だがその記憶も、周囲の誰もが違うことを言い、証拠がどこにも見つからない状況では、支えを失っていく。「過去を支配する者は未来を支配する。現在を支配する者は過去を支配する」作中には、その意味の標語が党の言葉として置かれている。記憶穴は、その標語を日々の作業として実行するための装置である。

出典

1984年 ジョージ・オーウェル / 1949

全体主義国家が支配する近未来。党は人々の言葉と記憶までも統制し、〈ビッグ・ブラザー〉の名のもとに思考そのものを監視する。下級党員ウィンストンのささやかな反逆を描く、ディストピア文学の原点。

PR作品を見る