非在人間(アンパーソン)
粛清によって抹殺され、あらゆる記録から名前や痕跡を消された人物。公式には「最初から存在しなかった」ことにされる。
来歴
非在人間(アンパーソン)とは、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』において、粛清されたうえに、あらゆる記録から存在の痕跡を消された者を指す。オセアニアでは、そうした人物は蒸発したと言い表される。
処刑や失踪だけでは終わらない。真理省の職員が過去の新聞や名簿にさかのぼり、その名を削り、写真から姿を消し、言及のある記事を書き換えていく。作業が済めば、その人物は死んだのではなく、「はじめから存在しなかった」ことになる。残された人が名前を口にすること自体が、危険な行為になる。
この世界では、「生きているか」ではなく「記録にあるか」が存在の基準になる。これは、支配者が社会の記憶を握ったときに起きる逆転だ。非在人間とは、誰かを排除すると決めたとき、その人の存在がどれほど完全に消し去られてしまうかを表している。