真理省
ニュースや記録、歴史そのものを体制に都合よく書き換える省庁。過去を絶えず修正し、「党は常に正しい」を成り立たせる。
来歴
真理省とは、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する、オセアニアの省庁の一つを意味する。報道、娯楽、教育、芸術などを扱い、新聞や歴史的記録の管理も担っている。主人公ウィンストン・スミスはここで、過去の新聞記事を書き換える仕事に就いている。
その仕事は、単純に新しい嘘をつくことではない。党の予測が外れれば数字を書き換え、戦争の相手が変われば、過去の記事に記された敵味方を書き換える。古い記録は記憶穴に落とされ、修正された新しい記録だけが残る。こうして、現在と矛盾する過去は、最初から存在しなかったかのように消されていく。党にとって、それは改竄ではなく「修正」である。
過去が現在に合わせて絶えず書き換えられるなら、党が以前に間違ったという事実もまた、記録の上から消えてしまう。真理省という名前は皮肉だが、その皮肉は単に「嘘を扱う省庁なのに真理と呼ばれている」というだけではない。党が記録を管理し、過去そのものを書き換える権力を握ったとき、「真実」とは何かという意味まで変えられてしまう。真理省は、真実の管理という巨大な権力を、新聞記事を書き換えるという日常の仕事として描いた存在である。