2+2=5
明らかな事実でさえ、権力が「そうだ」と言えばそうなる状態を表す式。誤りを口にさせるだけでなく、自分の目や記憶より権力の判断を信じるところまでを求める。
来歴
2+2=5とは、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する数式の表現で、明らかな事実でさえ、権力によって否定させられ、それを真実として受け入れることを強いられる状態を象徴する。
主人公ウィンストンは、党が支配する社会で「2+2=4」という単純な事実さえ、党が「5」と言えば5になるのかと問われる。ここで問題となるのは、間違った答えを口にすることだけではない。自分の目や記憶、理性よりも党の判断を優先し、最終的には「2+2=5」を自分自身の意思で信じることが求められる。これは、作中で描かれる二重思考と地続きにある。党は、昨日まで「4」だったものを今日は「5」だと言うだけでなく、「最初から5だった」と思わせようとする。過去の記録が書き換えられ、周囲の誰も違和感を示さないとき、疑わしいのは自分の記憶のほうになる。
2+2=5が指しているのは、嘘を信じ込ませることそのものではない。人が自分の認識を信じる力を失い、何を事実と見なすかの基準を、そのまま権力に預けてしまう状態である。現実を支配するとは、人々に何を考えさせるかを決めるだけでなく、何を「事実」として考えられるかまで決めることだと言える。