倫理委員会
社会の秩序と安定を維持するため、不適格と判断された子どもの排除にも関わる統治機関。平和を守るという名目で、犠牲を正当化する。
来歴
倫理委員会とは、貴志祐介の小説『新世界より』に描かれる社会の監視と統制を担う機関を指す。呪力と呼ばれる強大な力を人々が持つ世界で、その力が社会へ向かうことを防ぐために置かれている。
扱われるのは、犯罪への対処だけではない。子どもたちは成長の過程で観察され、危険の兆候があると見なされれば、静かに姿を消す。周囲の大人はそれを語らず、残された子どもたちの記憶にも手が加えられる。作中では、この措置が共同体を守るための必要として語られ、実際、力の暴走が招く結果の大きさもあわせて描かれる。
守るための犠牲が制度に組み込まれると、それを問い直す言葉が育たなくなる。倫理委員会という名が重いのは、そこで行われていることが無法ではなく、審議を経た決定だからである。作品は、この社会を単純な悪として描かず、平穏がどのような選別の上に成り立っているかを、成長していく主人公の目でたどっていく。